研究紹介

酸化亜鉛ナノ粒子の生成
~発光ダイオード・医療への応用~

藤田 恭久

ベビーパウダーに用いられる酸化亜鉛(ZnO)は,青色発光ダイオード(LED)で有名な窒化ガリウムとほぼ同じ特性をもつ半導体材料です.pn接合ができればLEDへの応用が可能になりますが,酸化亜鉛の場合,n型半導体は容易に作れるもののp型半導体をつくるのが困難なため,実用的なLEDの開発はできていません。私達は,アークプラズマを使って,減圧空気中で亜鉛を蒸発させることにより,容易にp型特性を示す酸化亜鉛ナノ粒子を生成することに成功しました。私達はn型酸化亜鉛導電膜をつけたガラス基板上にこのナノ粒子を塗布することにより近紫外線で発光するLEDの作製に成功しました。

図1 酸化亜鉛ナノ粒子の生成の様子 図2 生成した酸化亜鉛ナノ粒子

この方法は従来の高価な単結晶基板と単結晶薄膜を用いたLEDに比べ,半導体部分のコストを1/10000くらいに下げることができます。また,高度なデバイスプロセスが不要で,学生さんが亜鉛の金属から1日でLEDを作ることができます。このLEDは近紫外線で発光するので,蛍光体と組み合わせてRGBの発光や白色発光も可能です。近い将来,蛍光灯より安いLED照明装置が実現するかもしれません。

図3 LEDの発光スペクトルと発光の様子 図4 蛍光体を用いたRGB発光

また,酸化亜鉛ナノ粒子は,光を照射すると蛍光を発したり,光触媒効果といって殺菌作用を示します。たとえば酸化亜鉛ナノ粒子にがんの抗体をつければ,がん細胞だけを光らせたり,抗がん作用を発揮させたりすることができます。私達は医学部や生物資源科学部と連携してイメージングや治療などの医療応用の研究も行っています。

図5 がん細胞の蛍光イメージング

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