簡単な理論の限界

Deal-Groveの式は、実験結果をうまく説明しますが、いくつか問題があることが、この式の提案当時から知られていました[1]。

そのうちで最も深刻なものは、酸化膜が極薄い時、大体3nm以下の時に、酸化膜厚の増加が理論の予測値より顕著に速いことです。これは「初期増速酸化現象」と呼ばれます。

この初期増速現象については、酸化膜厚と酸化時間の関係について詳細な実験があり、次の式で説明できることがわかっています[2]。

K とL はパラメータで、右辺第二項がなければDeal-Groveの式と完全に一致します。ただ、K やL の意味や起源は全くわかっていませんでした。

参考: [1] Deal & Grove, J. Appl. Phys. 36 (1965) 3770.

        [2] Massoud, Plummer & Irene, JECS132 (1985) 2685.