シリコン熱酸化膜成長速度の簡単な理論

酸素がシリコン酸化膜を通り抜けてシリコンまで到達すると考えて、シリコン酸化膜の厚さが時間と共にどのように増えていくのか、考えてみましょう。

と書けます。ここで、 t は酸化している時間(酸化時間)、DO は酸素のシリコン酸化膜中の拡散係数です。酸素の濃度分布 CO(x) は酸化膜の厚さの成長に比べて十分速く一定の分布を取ると考えられるので左辺は0と置くことができます。

すると、この微分方程式は解くことができて、 CO(x) は次のように書くことができます。

シリコン酸化膜中を酸素は拡散することで通り抜けます。そこでまず、拡散方程式を使って、酸素の濃度分布を調べてみます。酸化膜の厚さ方向の位置座標を x と取り、x における酸素の濃度を CO(x) とします。すると、拡散方程式によって

AとBは、定数です。すると、酸化膜中の拡散の流れの連続の条件から次の式が成り立ちます。

COS は酸化膜表面の酸素濃度、COI は酸化膜とシリコンの界面での酸素濃度、X は酸化膜の膜厚、CO* は酸化膜中の酸素の飽和濃度、k は界面での酸化反応速度、h は定数です。そうすると、 COS は COI を用いて書くことが出来ます。

そして、 COI は CO* を用いて書くことが出来ます。

酸化膜の成長速度 dX/dt は、界面で起こる酸化反応と比例するので、次のように書けます。

そうするとさきほどの COI を用いて微分方程式を解くことが出来、X を酸化時間t の関数として求めることが出来ます。

ただし、t0は定数で、A とB は次のように定義されます。

こうやって、酸化膜厚X と酸化時間t の関係式を求めることが出来ました。この式は、Deal-Groveの式と呼ばれます。

参考: Deal & Grove, J. Appl. Phys. 36 (1965) 3770.