研究紹介

物質の機能をつかさどる電子の選択的可視化
~静電ポテンシャルイメージング法~

田中 宏志

我々は,理研放射光科学総合研究センター,筑波大学と協力してX線回折データから静電ポテンシャルを求める画期的な解析手法を開発し,これを電子同士の相互作用が強いマンガン酸化物に適用しました。この物質は,電気を通す金属状態から温度を下げていくとマイナス115℃で電気を通さない絶縁体に転移し,さらに磁場を加えると電気抵抗率が1万分の1に減少する巨大磁気抵抗(GMR)効果を示します。解析の結果,マイナス255℃では価数がプラス3価とプラス4価に相当するマンガンが規則正しく整列して存在するため,マンガン周りの電子が動き回れず電気を通さない絶縁体状態を示すことがわかりました。

この手法ではさらに電荷の移動や化学反応の様子なども実験的に可視化することが可能であり,高機能材料の開発に大きく貢献すると注目されます。

図1 -255℃におけるマンガン酸化物の静電ポテンシャル。Mn3+とMn4+が規則的に配列し,電気的に絶縁体となる。

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