研究紹介

重い電子系超伝導体の価数揺らぎ超伝導機構の検証
~超高圧実験で新たに開かれた地平~

藤原 賢二

インデンター型圧力セルという独自に開発した高圧発生装置(図2参照)を用いて,超高圧,極低温下で核四重極共鳴 (NQR*) を行うことにより,20年以上謎とされてきたCeCu2Si2の高圧下における超伝導転移温度の上昇のメカニズムを探っています。これまでの実験から,超伝導が4.8万気圧を境に突然消失すると同時に,電子状態も急激に変化することが明らかになっています。さらに,Ceイオンの価数が4万気圧以上で変化している可能性を示唆する実験結果が得られました。これらの成果は,従来とは全く異なる引力機構,すなわちCeイオンの価数揺らぎ(時間的変動)を媒介とする引力機構を支持するものです。今後の研究が進展し,超伝導メカニズムの理論的解明が進めば,新たな超伝導体の発見や創製につながるものと期待されています。

(*)医療用MRI(磁気共鳴画像診断)と同じ原理を用いており,物質内部の電子状態を探ることができる。

CeCu2Si2圧力相図 圧力セル
図1 CeCu2Si2 / CeCu2Ge2の圧力相図
P.Monthoux et al., Nature Vol 450 (2007) 1177.
図2 インデンタ―型圧カセル最大5万気圧の圧力発生が可能

研究紹介トップへ