北川研究室 島根大学

 熱電変換とは

はじめに

 今日,われわれは,蒸気タービンや冷蔵庫など,いろいろな方法で熱-電気の相互変換を行っています。これらの変換方式は大変優れた物であり,われわれの生活に欠かすことの出来ないものとなっています。一方で,これらの変換方式は原理的に駆動部や冷媒が必要であり,用途によっては最適な設計が難しくなると行った困難が生じます。また,現代社会では捨てられている熱が多量にあります。この中で,600℃以下の廃熱については既存の方法ではエネルギーとして利用する事が困難とされています。これらを有効利用することは省エネルギーや環境保全といった観点から重要であると思われます。熱電変換は材料に直接現れる現象を利用して熱と電気を直接変換する方法であり,発電と冷却(あるいは加熱)というふたつの利用方法があります。熱電発電はゼーベック効果を利用した温度差発電であり,熱電冷却(あるいは加熱)はペルチェ効果を利用して冷却,あるいは加熱を行います。素子には一般的に半導体が用いられます。可動部分を必要としないので,①騒音・振動がない ②メンテナンスフリーで信頼性が高い ③材料を適切に選択すれば,様々な熱源・温度に対応して発電できるといった特徴があります。

熱電効果

 1821年,医師ゼーベック (T.J.Seebeck, ドイツ) は下図のように二種類の金属を接合し,その接合部に温度差を与えると,回路内の磁針が振れることを発見しました。彼は磁針の振れる向きはビオ・ザバールの法則に従っていることも確認しており,温度差により回路に電流が流れていることは明白だったのですが,彼自身は「地磁気現象は地球の両極と赤道の温度差によるものである」という仮説に固執し,この現象を正しく説明できませんでした。
 ゼーベックの発見から13年後の1834年,時計師ペルチェ(J.C.Peltier, フランス)は下図のように二つの異種金属を接合した回路に電流を流すと,一方で吸熱,他方で発熱が起こり,電流の向きを逆にするとこの関係が逆転することを発見しました。しかし,彼はこの現象はジュール熱によるものと考え,自分の測定にも完全な自信は持てませんでした。
 ゼーベック,ペルチェともに彼らが発見した現象を正しく解釈し,理論づけするには至りませんでしたが,これらの現象は発見者の名前を取ってそれぞれ「ゼーベック効果」「ペルチェ効果」と呼ばれています。  これら熱電現象を発電や冷却に応用しようとする考えは,ゼーベック,ペルチェの発見から約1世紀後の1909年アルテンキルヒ(E..Altenkirch, ドイツ)により発表され,1929年ヨッフェ(A.F.Ioffe, ソビエト)は化合物半導体を使って変換効率を大幅に向上できることを示しました。現在,熱電変換に関する研究は国内外で活発に行われています。

熱電発電・熱電冷却,熱電素子

 半導体の熱起電力は,金属よりもかなり大きいので,一般的に熱電素子には半導体が使われます。p型とn型の半導体を組み合わせると,p型の熱起電力は正の符号を,n型の熱起電力は負の符号を持つので,さらに大きな電力あるいは冷却効果を得ることが出来ます(下図は熱電発電)。
 熱電材料は目的に適した形状に設計, 成型され, p型, n型の半導体をπ型やU型に組み合わせて熱電装置の基本単となります. しかしながら,1対の熱電発電素子で得られる開放電圧は大きくても0.5V程度と小さい値しか得られません。したがって,熱電発電素子を電源として使用するには,数多くの素子を直列につないだサーモ・モジュールに組み立てて利用されます。

応用

 熱電発電はエネルギー直接変換のもっとも単純なシステムとして,世界各国で盛んに研究が行われており米,旧ソ連,欧州では,宇宙,および海洋開発,僻地用電源として既に実用化されています。また,体温と外気の温度差で駆動する腕時計や,停電時に灯すろうそくの火を熱源とする災害時用ラジオなども商品化されています。将来的には自動車や焼却炉など大きな廃熱の回収のための利用が期待されています。
 熱電冷却は「電子冷却」とも呼ばれ,①精度の高い温度制御が出来る,②局所冷却・加熱に適しているといった特徴があります。また,冷媒による汚染がなく,環境にやさしい冷却方式です。電子機器回路の冷却,また血液サンプルクーラーやサーモグラフなど医療,オプトエレクトロニクス分野等の幅広い利用があります。また,無振動の特長を生かしてホテル用冷蔵庫にも用いられています。

参考文献

本稿の内容の多くを下記文献より引用させていただきました。

  • 上村欣一,西田勲夫 「熱電半導体とその応用」 日刊工業新聞社
  • 管義夫 「熱電半導体」 槇書店

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