島根大学総合理工学部物質科学科物理分野

廣光・水野研究室

Department of Materials Science, Shimane University
Hiromitsu & Mizuno Laboratory







廣光・水野研究室で行っている研究を紹介します。




有機太陽電池の動作機構の解明とその実用を目指した研究

 有機半導体を使った素子の開発は,最近の有機発光素子の成功でにわかに脚光を浴びています。 発光素子の次の研究対象として期待されているのが有機太陽電池です。 現時点で光エネルギー変換効率10%程度の有機太陽電池が報告されていますが, 実用化を考えると更なる効率の向上が必要です。そのためには有機太陽電池の動作機構をきっちりと理解することが必要だと私達は考えています。
図1. p-n接合のモデル.
励起子は空乏層に存在する内部電場によって電子とホールに解離し,キャリアーが生成される。
図2. Donor-Acceptor typeの光電池のモデル.
励起子はDonorとAcceptorの電子親和力の差によってDonorとAcceptorの界面で解離する。
 動作機構の中で最も大きな問題は,太陽電池の内部電場が光起電力発生にどう関わっているのかということです。 大きく分けて図1と図2の2つのモデルが考えられます。 図1は,シリコンなどの無機太陽電池の動作機構を説明するのに用いられるモデルです。 バンドの傾きがその場所での内部電場の大きさに比例するので,p−n界面付近の空乏層には強い内部電場があります。 この電場のために光照射によって生成された励起子が電子とホールに解離し,電流キャリアーが作られるというモデルです。 一方,図2は多くの有機太陽電池の解説書に書かれているモデルで,励起子はDonorとAcceptorの界面まで拡散して, そこで両者の電子親和力の差によって解離するというモデルです。 このモデルでは内部電場はキャリアー生成に対して本質的な役割りを果さないことになります。

 私達は,電場変調スペクトル法という方法で有機太陽電池の内部電場分布を測定し,その内部電場と光電流との相関を見ることで,キャリアー生成に対する内部電場の役割りを調べています。 現時点までに,内部電場と光電流の間によい相関があることを見出しており,このことは内部電場が本質的な役割りを果していることを意味しています。

 動作機構の研究と並行して,私たちは実用に向けた有機太陽電池の開発も行っており,このホームページのトップページの写真にあるような試作品も作っています。 太陽電池に関連した私たちの代表的な論文として以下のものを参照していただければと思います。
  1. I. Hiromitsu, Y. Kaimori, M. Kitano and T. Ito, Phys. Rev. B 59 (1999) 2151.
  2. I. Hiromitsu, Y. Murakami and T. Ito, J. Appl. Phys. 94 (2003) 2434.
  3. Y. Yoshida, S. Tanaka, Y. Fujita and I. Hiromitsu, J. Appl. Phys. 106 (2009) 064510.  


励起エネルギー機構を利用した新しい発光材料の開発



 島根大学では酸化亜鉛を用いたナノテクプロジェクトを推進しています。その一環として私たちの研究室では酸化亜鉛ナノ粒子と有機色素分子を複合させた新しい発光材料の研究を行っています。酸化亜鉛ナノ粒子を紫外光で励起し、その励起エネルギーを有機色素に移動させて有機色素を光らせる、という研究です。医療用の蛍光標識剤としての利用が考えられる他、励起エネルギー移動を薄膜系で実現すれば新たなデバイスの開発にもつながると考えています。

  1. I. Hiromitsu, T. Ikeue, K. Karino, T. Ohno, S. Tanaka, H. Shiratori, S. Morito, Y. Fujita and M. Handa: Chem. Phys. Lett. 474 (2009) 315.
  2. I. Hiromitsu, A. Kawami, S. Tanaka, S. Morito, R. Sasai, T. Ikeue, Y. Fujita and M. Handa: Chem. Phys. Lett. 501 (2011) 385.




分子性結晶の磁性研究

 私達の研究室では1988年から有機物を対象とした物性研究を開始しましたが, 最初の10年間は図のような高分子フタロシアニンの磁性研究を行いました。 フタロシアニンはヨウ素などの電子受容体と反応させると電気がよく流れるようになることはよく知られていましたが, 私達は,右図のような高分子フタロシアニンの場合には電気がよく流れるようになると共に,特異な反強磁性を示す事を見出しました。 最高で200 Kという有機物質としては例外的に高い反強磁性転移温度を持つものも合成しました。代表的な論文として以下のものを参照していただければと思います。
  1. I. Hiromitsu, H. Yamamoto and T. Ito: Phys. Rev. B 52 (1995) 7252.
  2. I. Hiromitsu, N. Ikeda, M. Handa and T. Ito: Phys. Rev. B 57 (1998) 8501.

 その後,島根大学物質科学科の化学系の先生と共同で,例えば右図のような遷移金属2核錯体の磁性を構造によって いかにコントロールするかという研究を続けています。このテーマに関しては1995年以来著しい業績をあげており,これは物理屋と化学屋の協力により初めて可能となった研究だと思います。