島根大学素粒子論研究室セミナー(2013年以降)

場所:島根大学総合理工学部1号館5階、素粒子論研究室コロキウム(501号室)等

日時・スピーカー・タイトル・アブストラクト


【2016年度】

[1]金田 佑哉氏 (新潟大学)
6月8日(水)15:30〜 総合理工学部1号館 22講義室

-講演題目-
Lepton Mass Matrices and The Sign of Universe's Baryon Asymmetry
-講演概要-

ニュートリノ振動実験によって、標準模型では説明できない「小さなニュートリノ質量」や 「ニュートリノのフレーバー混合」などニュートリノの様々な性質が明らかになってきている。 特にT2K実験やNOνA実験ではニュートリノのCP位相まで測定され始めている。 これらニュートリノの性質を説明する必要最小限のパラメータを導入し、標準模型の背後の物理を探る試みがある。 これが“Occam's Razor Approach”である。 このような手法では質量行列の特定の成分にゼロを課した構造を指す“Zero Texture”と深く結びついており、 これらの対応とOccam's Razor approachを用いた研究を説明する。
また今回のセミナーでは、宇宙バリオン数非対称性に対する 「反バリオンではなく、なぜバリオンが選ばれたのか?」という符号問題に答えを与える最新の研究成果も紹介する。



[2]清水 勇介氏 (広島大学)
6月23日(木)15:00〜 総合理工学部1号館 1-501

-講演題目-
フレーバー対称性とその検証
-講演概要-

ニュートリノ振動実験の精密測定の結果、ニュートリノには質量があり、レプトンには大きな世代混合があることが分かった。 また、ニュートリノの原子炉実験により、レプトンセクターの最後の世代混合角(θ_13)が測定された。 素粒子標準模型では素粒子の質量階層性と世代混合を自然に説明することができない。 この問題を解決する手段の一つとして、フレーバー対称性、特に非可換離散対称性をレプトンセクターに課すことによって、 レプトンの大きな世代混合を説明できることが先行研究で知られている。 本セミナーでは、フレーバー構造を説明する非可換離散対称性の模型(A_4模型)を紹介し、その模型の検証可能性を議論する。 具体的には、フレーバー対称性を破るスカラー場の質量の制限を現象論の観点から考察し、 コライダー物理でどのようなシグナルが現れるか検討する。


【2015年度】

[1]高江洲 義太郎氏 (東京大学)
5月8日(金)14:30〜 総合理工学部1号館 12講義室

-講演題目-
T2KK/T2KO実験での質量階層性、CP位相測定の可能性
-講演概要-

ニュートリノ13混合角の精密測定はニュートリノ物理の重要な目標である質量階層性の決定およびレプトンセクターのディラックCP位相測定への道を大きく拓いた。本講演では次世代のニュートリノ実験として提唱されているTokai-to-Kamioka-to-Oki (T2KO) およびTokai-to-Kamioka-to-Korea(T2KK)実験を中心に、今後10年での質量階層性およびディラックCP位相の測定可能性を議論する。


[2]
松井俊憲 氏 (富山大)
7月24日(金)13:00〜 総合理工学部1号館 1-501

-講演題目-
Higgs inflation by flat potential and a radiative seesaw mechanism

-Abstract-
The standard model is established by discovering the Higgs boson. However, the problems of dark matter (DM), neutrino oscillation, and the baryon asymmetry of the Universe are known as the beyond the-standard-model phenomena. In the radiative seesaw mechanism, neutrino mass generation is forbidden at the tree level and DM stability is explained by Z2 symmetry.
For such multi-Higgs models, the constraint of vacuum stability can be relaxed. If the vacuum is stable up to the inflation scale, Higgs boson can behave as inflaton in the Higgs inflation scenario. For the case of flat potential, Higgs inflation may be tested by future CMB experiments such as LiteBIRD. In this talk, we investigate Higgs inflation by flat potential in the framework of radiative seesaw mechanism. Exploring the effect of the inflation constraints on TeV scale, we discuss -Contact- testability at the DM direct detections and the collider H. Ishida(1-533) experiments in addition to the CMB observations.


[3]
身内 賢太朗氏 (神戸大学)
8月1日(土)9:30〜 総合理工学部1号館 1-501

-講演題目-
暗黒物質直接探索実験の現状

-講演概要-
世界中で行われている暗黒物質直接探索実験についてレビューします。 単に最終結果を眺めるだけでなく、その前にどういうデータがあるのかをお見せすることで理論家の皆さんと議論したいと考えております。


[4]
岡田宜親 氏(アラバマ大)
8月18日(火)17:20〜 総合理工学部1号館 1-501

-講演題目-
Higgs Inflation, Seesaw Physics and Fermion Dark Matter

-講演概要-
We present an inflationary model in which the Standard Model Higgs doublet field with non-minimal coupling to gravity drives inflation, and the effective Higgs potential is stabilized by new physics which includes a dark matter particle and right-handed neutrinos for the seesaw mechanism. All of the new particles are fermions, so that the Higgs doublet is the unique inflaton candidate. With central values for the masses of the top quark and the Higgs boson measured by the collider experiments, the renormalization group Improved Higgs potential is employed to yield the inflationary predictions which are perfectly consistent with the Planck 2015 results.

Ref:
Okada & Shafi, Phys.Lett. B747 (2015) 223


[5]
松崎真也氏 (名古屋大学)
8月25日(火)13:00〜 総合理工学部1号館 1-501

-講演題目-
2 TeV Walking Technirho at LHC?

-講演概要-
The ATLAS collaboration has recently reported an excess of about 2.5 global significance at around 2 TeV in the diboson channel with the boson-tagged fat dijets, which may imply a new resonance beyond the standard model. I will provide a possible explanation of the excess as the isospin-triplet technivector mesons of the walking technicolor in the case of the one-family model as a benchmark. Currently available LHC limits are used to fix the couplings of technivector mesons to the standard-model fermions and weak gauge bosons. The technirho’s are mainly produced through the Drell-Yan process and predominantly decay to the diboson(di-weak bosons), without decaying to the Higgs ("technidilaton") in contrast to other models ("Conformal Barrier"). The 2 TeV walking technirho's thus account for the currently reported excess in the diboson channel. The consistency with the electroweak precision test and other possible discovery channels of the 2 TeV technirhos are also addressed.


[6]
南條創 氏 (京都大学)
10月1日(木)10:30〜 総合理工学部1号館第3会議室

-講演題目-
KOTO experiment to search for KL->pi0nunu

-講演概要-
KOTO experiment searches for new physics that breaks the CP symmetry. We use the process KL->pi0nunu to prove it. We introduce the ability of KOTO experiment to search new physics.


[7]
隅野行成 氏 (東北大学)
1月25日(月)10:30〜 総合理工学部1号館 1-501

-講演題目-
WW scattering in a radiative electroweak symmetry breaking scenario

-講演概要-
A classically scale invariant (CSI) extension of the standard model (SM) induces radiative electroweak symmetry breaking and predicts anomalously large Higgs self-interactions. Hence, WLWL scattering processes can be a good probe of the symmetry breaking mechanism. We develop a theoretical framework for perturbative computation and calculate WW scattering amplitudes in a CSI model. It is shown that WLWL scattering amplitudes satisfy the equivalence theorem, and that a large deviation of WLWL differential cross sections from the SM predictions is predicted depending on the c.m. energy and scattering angle. The results are more accurate than those based on the effective-potential approach. A prescription to implement predictions of the CSI model to Monte Carlo event generators is also presented.


[8]
戸部和弘 氏 (名古屋大学)
2月18日(木)14:30〜 総合理工学部1号館 12講義室

-講演題目-
新物理とmuon g-2

-講演概要-
ミュー粒子異常磁気能率(muon g-2)の測定値と標準模型の予言値の間に食い違いがあることが報告されている。この食い違いの大きさは、標準模型でのW,Zボソンの寄与ほどの大きさであることから、これが新物理によるものだとすると、電弱スケールほどの質量を持つ新粒子の存在を期待させる。よってこのような新粒子は直ちにLHC実験やフレーバー物理の実験などで検証できる可能性があるので、今、そのような新物理の可能性を研究することは重要であると思われる。このセミナーではmuon g-2のアノマリーを説明出来るモデルはどのようなモデルなのか、の議論をしてから具体的なモデルとしてτーμ flavor violationがあるtwo Higgs doublet modelを紹介し、このモデルの予言や制限を議論したい。


[8]
山田將樹 氏 (東京大学宇宙線研空所)
3月11日(木)14:30〜 総合理工学部1号館 1-501

-講演題目-
Spontaneous Baryogenesis from Asymmetric Inflaton

-講演概要-
インフレーション理論の登場によって宇宙論的な様々な初期値問題を解決することができたが、物質反物質非対称性の起源の謎は残された問題となっている。このトークでは、インフラトンとB-Lチャージを持った場の間の4点相互作用を導入すると、spontaneous baryogenesisと呼ばれる機構を通じてインフレーション後に物質反物質非対称性を作り出すことができることを説明する。また、この相互作用が超重力理論において自然に現れ、特にカオティックインフレーションモデルにおいては充分な量の非対称性を作り出すことができることを示す。


【2014年度】

[1]
柏瀬翔一 氏 (金沢大学)
10月28日(火)14:30〜 総合理工学部1号館 1-501

-講演題目-
輻射シーソー模型における宇宙のバリオン数生成とインフレーション

-講演概要-
素粒子物理学における標準模型はさまざまな実験で検証され、成功した理論である。 しかしながら、この枠組みでは説明できない事象も明らかになっており、標準模型の拡張による解決が考えられている。 このような問題の中でもニュートリノ質量や暗黒物質、宇宙のバリオン数非対称性は実験・観測的事実であり、 理論に内在する問題に先立って解決されるべきものである。 そこで,本研究では小さなニュートリノ質量と暗黒物質の存在が共通の起源をもつMa模型に注目し、 レプトジェネシスによるバリオン非対称な宇宙の実現可能性について調べた。 さらに、最近発表されたBICEP2によるBモードの観測はインフレーションの存在を強く示唆しているため、 拡張Ma模型におけるインフレーションについても議論したい。


[2]
松崎真也 氏 (名古屋大学)
11月13日(木)14:30〜 総合理工学部1号館 1-501

-講演題目-
Walking Technicolor in light of LHC Run-II

-講演概要-
The LHC scalar boson at 125 GeV can be identified as the technidilaton, pseudo Nambu-Goldstone boson for the spontaneous breaking of scale symmetry in walking technicolor. To tell the standard Higgs from the technidilaton, one needs to wait for the precise estimate of the Higgs couplings to the standard model particles, which will be doable at the upcoming LHC-Run II. This talk will summarize the technidilaton phenomenology in comparison with the currently available LHC data. Besides the technidilaton, the walking technicolor predicts the rich particle spectrum such as technipions and technirho mesons, arising as composite particles formed by technisector particles (techni-fermions and -gluons), just like hadrons in QCD. In addition to the technidilaton, in this talk I will also discuss the LHC phenomenology of those technihadrons and the discovery channels, which are smoking-guns of the walking technicolor, to be accessible at the LHC-Run II.


[3]
沼澤宙朗 氏 (京都大学)
11月20日(月)13:00〜 総合理工学部1号館 1-501

-講演題目-
Dynamics of Entanglement Entropy from Einstein Equation

-講演概要-
AdS/CFT対応とは重力理論と場の理論の双対性である.2つの理論は等価であるため,重力側でのアインシュタイン方程式の対応物が場の理論側にも存在するべきである.そこで,われわれは線形化されたアインシュタイン方程式の双対な対応物であるエンタングルメント・エントロピーに対する微分方程式を導いた.本セミナーでは,AdS/CFT対応を用いた励起状態のエンタングルメントエントロピーの解析などに触れつつ,これらの結果を解説する.


[4]
藤本教寛 氏 (大阪大学)
12月1日(月)10:00〜 総合理工学部1号館 1-501

-講演題目-
Magnetic flux meets orbifolds

-講演概要-
余剰次元の幾何として一様背景磁場を持つトーラスやオービ フォールドを仮定した模型は、カイラルフェルミオン生成・質量階層性・ フ レーバー構造や世代導出などを可能にする点で非常に興味深い模型である。しか し、これら2つの幾何を同時に考えた理論は今までなく、その理論の 性質や構 成方法はこれまで明らかとなっていなかった。我々は今回、背景磁場をもつオー ビフォールド余剰次元を構築することに成功し、その枠組で世 代数を制限する 機構を見出した。また、量子力学を応用することで、theta関数を伴う複雑な解 析を厳密に行う手法も発見した。今後、これらの結 果を使い、具体的に3世代 模型を構築し解析する展望についても触れる。


[5]
遠藤和寛 氏 (東北大学)
12月1日(月)11:30〜 総合理工学部1号館 1-501

-講演題目-
輻射補正による電弱対称性の破れの解析と検証可能性

-講演概要-
標準模型は実験事実と無矛盾な予言を与えているなかで,ヒッグスポテンシャルだけは未だに実験的に同定されていない。これを同定するためにはヒッグス粒子の自己相互作用を測る必要があり,現状ではこれのみが標準模型の予言と大きく異なっている可能性は排除されて いない。我々は,ヒッグス自己相互作用のみが標準模型の予言と異なる模型としてColeman-Weinberg型のポテンシャルを持つ古典的スケール不変な模型を調べる。摂動論的予言の信頼性に注意した有効ポテンシャルによる解析方法について,レヴュー,及び我々の解析手法を紹介する。また,実験事実の再現と示唆される物理の可能性について考察する。


[6]
大野慶子 氏 (お茶の水女子大学)
12月22日(月)14:00〜 総合理工学部1号館 1-501

-講演題目-
Radion in Randall-Sundrum model at the LHC and photon collider

-講演概要-
Randall-Sundrum(RS)模型はゲージ階層性問題を自然に解決する、「標準模型を超える」素粒子模型として注目されている。本セミナーではRS模型の一般的帰結として予言される、radionというスカラー粒子のLHCでの生成崩壊について調べ、radionの質量及びスケールパラメーターに対して得られた制限について報告する。 またradionはトレースアノマリーの効果により、光子やグルーオン等のゲージボソンと特徴的な相互作用をすることが知られている。本セミナーでは、photon colliderにおけるradionの生成崩壊を調べ、探索可能性等について調べた結果についても議論する。


[7]
大木洋 氏 (名古屋大学KMI)
1月15日(木)14:00〜 総合理工学部1号館 1-501

-講演題目-
Conformality and composite Higgs scalar on the lattice

-講演概要-
ゲージ理論はフレーバー数やその表現に依って、閉じ込め現象やカイラル対称性の自発的破れの有無等の多様な相構造を持っていると考えられる。 特に、ゼロ質量のフェルミオンが多く結合する理論では、ゲージ結合定数の 非自明な赤外固定点が存在すると考えられており、低エネルギーではスケール不変な理論が実現されていると考えられている。 ここでは、その共形不変な理論の有力な候補である、大きなフレーバー数を持つQCDの非摂動論的解明に向けて、格子ゲージ理論を用いた我々の最近の研究の進展について紹介を行う。 また、その相境界近傍で実現されると期待される近似的スケール不変性の破れを用いた動的な電弱対称性の破れを引き起こす模型への応用や、LHCにおいて発見されたヒッグス粒子との関連について議論する。


[8]
冬頭かおり 氏 (名古屋大学)
2月27日(金)14:00〜 総合理工学部1号館 11講義室

-講演題目-
Electroweak phase transition and Higgs couplings in the singlet-extended SM

-講演概要-
2012年ヒッグス粒子の発見に伴い素粒子標準模型は完成を迎えた。一方、現実には素粒子標準模型では説明の出来ない現象が存在するため、この模型を超える新たな高エネルギー物理が必要である。そして高エネルギー物理を必要とする現象の一つに「宇宙のバリオン数非対称性」が挙げられる。現在ではこの非対称性を説明する様々なシナリオが考案されているが、その一つに電弱相転移に伴ってバリオン数を作り出す「電弱バリオン数生成シナリオ」がある。本研究では素粒子標準模型に実スカラー場を加えた模型の枠組みで、電弱バリオン数生成シナリオに必要な一次相転移について再考察を行い、ヒッグス結合定数の標準模型からのずれの評価と新たなヒッグス粒子の質量に対する制限を与える。




【2013年度】

[1]
日時: 10月25日(金)13:00〜14:00 
講師: 山田 憲和 氏(高エネルギー加速器研究機構) 
題目: “Why many flavor QCD is so interesting”
要旨:近年、特に格子ゲージ理論の分野で盛んに研究されている、Many-flavor QCDの研究を紹介する。
動機と現状について復習した後、最近のオリジナルの研究について紹介する。時間があれば将来の展望
についても触れる。


[2]
日時: 11月 8日(金)13:00〜14:00 
講師: 高橋 亮 氏(島根大学) 
題目: “Separate seesaw and its applications to dark matter and baryogenesis”
要旨: ニュートリノの質量の小ささを説明する新しいシーソー模型を紹介する。そして、その模型を宇宙の暗黒物質、
バリオン非対称性の説明へと適用する。


[3]
日時: 12月 6日(金)13:00〜14:00 
講演者:波場直之(島根大)
タイトル:"Darkgenesis"
要旨:「何故、物質が反物質より多いのか?」、「何故、ダークマターは通常の物質の5倍も宇宙にある(エネルギ
ー密度を担う)のか?」を自然に説明できる新しいメカニズムについて解説します。また、レビューとしてレプト
ジェネシスを易しく解説します。


[4]
日時: 12月20日(金)13:00〜14:00
講師: 杉野 文彦 氏(岡山光量子科学研究所)
題目: “SUSY double-well matrix model as 2D type IIA superstrings and its dynamical SUSY breaking”


[5]
日時: 1月17日(金) 13:00〜14:00
講師: 望月 真祐(島根大)
題目:"Critical statistics at the mobility edge of QCD Dirac spectra in the QGP phase”
   (arxiv:1312.3286)

[6]
日時: 1月31日(金)13:00〜14:00
講師: 小林 玉青  (米子高専)
タイトル: 実空間くりこみ群による局在化相転移の解析
セミナー概要: 通常の二重井戸ポテンシャル系においては、トンネル効果があり、
基底状態は対称性の保たれた量子的状態である。
ここに、エネルギー散逸の効果を取り入れると、トンネル効果が抑制され、
基底状態は局在化した古典的状態となり、系の対称性は自発的に破れる。
この局在化相転移を扱うには、散逸系の量子力学的定式化が必要となるが、
その一般的なハミルトニアンを書き下すことは困難である。
そこで、本来の系のターゲット自由度に加えて、環境自由度をミクロの作用に
対して導入し、環境自由度へのエネルギーの移行によって、散逸を表現する。
環境自由度を観測しないことにして経路積分してしまうと、ターゲット自由度の
有効相互作用が得られ、それはエネルギー散逸を記述することが可能となる。
得られる有効相互作用は、虚時間方向に非局所な長距離相互作用となるため、
解析には工夫が必要である。
今回は、Decimation くりこみ群(DRG)を用いて、量子散逸系の局在化相転移を
解析する手法を紹介する。
DRGは非摂動くりこみ群の手法の中では、離散型実空間くりこみ群に類する。
まずは、DRGを用いて有効相互作用や物理量を直接計算する方法を紹介する。
量子散逸系の場合には、非局所相互作用に対応するため、DRG を Block DRG
(BDRG) に拡張する。
BDRG は非局所項がある場合についても、有限レンジの有効相互作用を数値的に
計算することが可能である。
特に、散逸のあるイジングスピン系や二重井戸ポテンシャル系においては、
ターゲットと環境のカップリングがある大きさ以上になると、
局在化相転移が起こると期待される。
相転移点の解析においては、有限レンジスケーリングの手法を用いる。
これは有限レンジの結果から無限レンジの情報を引き出す手法で、
局在化相転移の臨界点を定量的に決定する方法とその結果を説明する。